旅のはじまり
私がシャスタ山を初めて訪れたのは、いまから14年前のことで、そのころ参加していたハイキング会でのことだった。ほんの数名での旅で、シャスタ市内のバケーションハウスに滞在した。その時には思いもよらなかったが、その旅が後の私の生き方を変えることになった。
ちょうど同じ頃、知人からデジタルカメラを譲ってもらい、何を撮ろうかと漠然と考えていた。当時は、まだ今のように、デジタルが主流とまではいかない頃だった。
初めてのシャスタの旅に持っていたのは、その時の中古カメラだった。「景色をきれいに」撮りたいというよりは、旅の記録として撮ったという覚えがある。とうぜん、みんなもカメラくらいは持っているので、写真係として撮ったのでもない。
その旅で訪れた場所を回想してみると、
❏キャッスル・レイク 森と岸壁に囲まれた静かな高山湖で、その湖畔で軽くハイキングをした。
❏モスブレーの滝 サクラメント川渓流沿いのコケで覆われた崖からしみ出してくる幻の滝。当時は、その滝まで線路沿いを歩いて行けたが、現在は立ち入り制限状態で、新しいトレイルが計画中。
❏サウスゲート・メドウ 車で行ける最高地点オールド・スキー・ボウルにトレイルヘッド(登山口)があり、そこから東に向かうハイキングコース。高山草原(メドウ|お花畑)には、泉から湧き出す水が流れ、色とりどりの花が咲く。
❏シャスタ市内からのアルペン・グロー(山の夕映え)の観察。
などがある。
旅先ではよく、早起きして街中を散策するのが楽しみの一つでもある。その時も、こっそりとひとりで出かけた。夏の終わりの爽やかな早朝の空気に、やわらかい光が差し込んでくる時間帯は、シャスタ山に限らずどこであってもいいものだ。
旅を終えて、撮った写真の整理をしながら、山や旅に対する気持ちが強くなったように思う。同時に写真撮影そのものに対しても、だんだんと身が入るようになった。カメラも、必要な機能が搭載されたものに買い換えていった。
撮影場所は、毎回シャスタというわけにもいかない。幸いにサンフランシスコ周辺には、すぐに行けるところに、いい場所がたくさんあるので、時間ができると出かけては、鳥や花の観察をしながら撮っていた。年に何度かは、遠出をするようにもなった。
身近なところでイベントがあると撮らせてもらい、その撮影を通じて新しい出会いも生まれるようになった。また、同じ景色を撮りに来ている人たちとの自然な交流もできてきた。そうした出会いや交流が、その後の私を大きく変えてくれたように思う。なにしろ、写真を始める前は、あまり外出もせず、友人もほとんどいなかったからである。
いつしかシャスタ山には、何かと理由をつけて出かけるようになった。よく知人を誘って案内したりもした。家族旅行の目的地でもある。今では、誰かと一緒に行くにしても、ひとりで行くにしても、けっして理由はいらないと考えている。
【プロフィール】
樋口昭夫。福岡県久留米市出身。カリフォルニア州サンフランシスコ郊外に在住。米国生活は約25年。技術翻訳のかたわら、北カリフォルニア各地で、風景や、鳥や花など自然を撮り続けています。
シャスタの写真を撮るようになったのは、デジタルカメラを初めて手にした約10年前のことで、デジタル写真歴とシャスタ歴はほとんど同じくらいです。シャスタをはじめ各地を、いろいろな季節に、いろいろな人と一緒に訪れながら、人との出会いや、その土地の風土や歴史を楽しんでいます。

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