バークレーを南北にはしるシャタック通り(Shuttack Avenue)を、ダウンタウンから北に向かって道なりに走ると、通りの名前は、ヘンリー通り(Henry Street)、さらにサター通り(Sutter Street)と変わり、トンネルのある場所に出る。このトンネルがノースブレア・トンネル(Northbrae Tunnel)で、それを抜けるとまた名前が変わってソラノ通り(Solano Avenue)となる。
◉ノースブレア・トンネル|Northbae Tunnel
このトンネルの近くに車を停めて、あたりを歩くことにした。このトンネルは、かつてイーストベイを走っていた路面電車用のトンネルで、ちょうどこのあたりに駅があったらしいが、今では痕跡は何も残っていない。
このあたりをシティと呼ぶにはどうかとも思うが、ずっと前に、このあたりが街の中心になるという計画があったということを聞いたことがあった。実際には、もっと壮大で、1900年代のはじめごろこの場所が開発されたのは、サクラメントからここバークレーに州都を移転するかなり有力な案があったからなのだそうだ。日本でいえば、首都移転計画である。
それを念頭に置いて、このあたりの通りには、カリフォルニア州の郡の名前が付けられているとのことである。言われてみれば、このあたりの道は、ダウンタウン付近に多い人名由来ではなく、ざっと幹線道路だけでも、サター(Sutter)、ソラノ(Solano)、マリン(Marin)、モントレー(Monteley)、コルサ(Colusa)など、州の郡名にちなんだ通りの名前となっている。
今のカリフォルニア州や、メトロポリタン化したサクラメント(Sacramento|現在の州都)、それに学園都市として繁栄しつづけているバークレーの様子を見れば、ここに州都が移転した様子はどうも想像しがたい。
◉ファウンテン・ウォーク + ザ・サークル
トンネルの中も歩くことはできるものの、今回のテーマからずれるので、まずは、サター通りからトンネルの上に出る石段のファウンテン・ウォーク(Fountain Walk|噴水歩道)を登った。その先は、ザ・サークル(The Circle)と呼ばれている交差点である。サークルの真ん中には3匹の熊が器を支えるような形の噴水がある。
この噴水は1911年に建てられたが、1957年に事故で壊れたらしく、今あるものは1996年に復元・再建されたものである。
6つの道が交差するラウンドアバウト式(|環状交差点)の交差点で、交通量はかなり多い。
このタイプの交差点が増えてきたようにも思う。バークレー・マリーナの交差点では、つい最近これが採用された。いま現在、I80のギルマン(Gilman Street)出口周辺は工事で通行止めになっているが、この出入り口もこのラウンドアバウト式になるようである。
すこしの間、様子を見ていると、われ先にとどんどん交差点に入ってさっさと自分の進みたい方向に行く人や、その流れについて行けずになかなか交差点に入れない人、自分の方が先だとクラクションを鳴らす人、他の車にばかり気を取られて、歩行者に気付かない人などが見られた。
◉ソラノ通り
このサークルから、丘を降りるようなトレイル風の道をソラノ通りに向かった。ソラノ通りの東半分は、隣町のアルバニーではなく、バークレーに属する。いつ通っても混雑しているザカリーズ・ピザ(Zachary's Pizza|シカゴ風のピザ屋さん)や、かつてこのあたりの娯楽の中心であったと思われる廃館になった「まちの」映画館などがある。
小さな町には、たいてい中心部には映画館があった。そんなまちの小さな映画館の廃業が目立つ中、ちなみに、ソラノ通りのアルバニー側にあるもう一つの「まちの」映画館は現在も興行中である。
この通りを初めて訪れたのは渡米して間もないころ、いろいろな場所を案内してもらったときのことで、他の場所はあまり記憶にないのに、この通りだけは、片道1車線なのに、かなり広く、その整然としたようすが印象深く残っている。
◉ インディアンロックとモーターロック
メキシカンの店で、オㇽチャータ(horchata)という好物の白い飲みものを手に入れて、トンネル方面には向かわずに、ソラノ通りの延長線上にあるインディアンロック・パス(Indian Rock Path)の緩い坂道を上ることにした。途中3本の道を横切ると、インディアンの「岩」に突き当たる。
ここに初めて来たのももう20年くらい前になるが、いつもは岩のすぐ脇に車を停めることが多く、この小径を歩くのは3、4回目だろう。住宅街を貫くこのタイプの小径は、起伏の多いサンフランシスコや、バークレーのこの付近にはいくつもあって、車道沿いを歩く時の喧噪を忘れて散歩するにはもってこいである。
インディアンロックには、いつ来ても必ず先客がいて、最近はロッククライミングの練習に若者たちが集ったりしている。このあたりには、ここ以外にいくつもの「ロックパーク」がある。今回は岩の上には登らずに、そこからすぐ近くにあるモーターロック・パーク(Mortar Rock Park)向かうことにした。
なぜ「モーター?」という疑問があったが、説明文を読んで、つづりをよく見ると、「moter」ではなくて、「臼、すり鉢」の意味のある「mortar」だった(残念ながら、私の耳では聞き分けられない)。昔、このあたりに住んでいた人々(先住民)が、木の実をすりつぶしたり、貯蔵したりするために、利用したとされる、岩のくぼみが残っていることに由来するらしい。
ここには、下の方でロッククライミングをする人以外には、岩の上には人はいなかったので、登ってみた。どの方向も木で覆われていて、インディアンロック程度の眺めはないが、かろうじて、トレジャーアイランド方面が木の隙間から覗かせていた。しばらくくつろいだ後、岩を降りようとするのと行き違いに登ってくるひとたちと出会った。
ここからもう少し北側と西側のサウザンドオーク地区は、かつての行楽の場所で、トレイルなどもあって、シティ・パークにするという案もあったらしいが、どうも開発業者の方に軍配があがったらしい。
◉シャタック通りへ
訪れた2つのロックパークはどちらもインディアンロック通り沿いにある。大学のすぐ西側を通るオックスフォード通りとシャタック通りはちょうどこのあたりから発している。そのシャタック通りを通って、丘を降りて、車を停めた場所に戻ることにした。
イーストベイもこの辺は、夏の間も暑くなく、むしろ涼しい日も多い。冬の一時期を除けば、それぞれの家が競うかのようにいろいろな花や木を植えて、通りを歩く人の目を楽しませてくれる。
何げなく通過するだけだった街角や景色も、忘れ去られようとしている歴史や由来を知ると、違って見えてくるものだ。
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