2023年8月1日火曜日

「北カリフォルニアからの便り」⑤ カリフォルニアの原風景を求めて(ちいさなにほん連載)

カリフォルニアの原風景を求めて

ある景色・風景に出会ったとき、ここはもともとどんな風景だったのだろうと 気になることがある。「原風景」という言葉には、「桃源郷」にも似た響きを感 じて、好きである。昔のままの姿は、もうどこにも残っていないのかもしれない し、いざ「これが原風景ですよ」といわれても、それがこの先もそのまま残され るかどうかは知れない。

カリフォルニア州のニックネームは「ゴールデンステイト」(黄金の州)であ る。遠い昔、ある探検家がメキシコからカリフォルニア南部を訪れたとき、咲い ているカリフォルニア・ポピー(花菱草ーハナビシソウ)をみて、まるで「黄金 」のようであるといった記録がある。

もう十数年前のことになるが、カリフォルニアポピー保護区に一面に咲くこの 花を初めて見た時、そんな感覚にひたったことがあった。カリフォルニアの青空 のもと、一面に咲き陽にゆれる鮮やかな原色のオレンジは、強烈な印象で脳裏に 焼きつくほどである。 この花が原生するのは、西海岸、とくにカリフォルニア州に限られる。今でこ そ、種で売られて、全米の花壇で見られるのかもしれないが、この州では、ほぼ 一年を通じてどこかで咲いているといわれている。

その後、赤やピンクの花まで見つけてしまったが、基本的には、オレンジ、黄 色、そしてまれに白。個人的にはオレンジと黄色のグラデーションがあるものが 好きである。一般に、内陸部ではオレンジ、沿岸部では黄色が主流で、一見して 別の花のようにも見えるがまったく同じ種ということである。

カリフォルニアの州立公園や非営利団体が維持・管理している公園には、昔の 面影を残したところが何か所かある。変わり行く景色の中で、そこだけを昔のま まにとどめることは至難の業であると思うが、個人主義の国ともいわれるアメリ カには、こうした自然保護や、復古に関心を持ち、資金や時間を提供する意識の 高い人が多いのも事実である。

『オズの魔法使い』には、ドロシーと3人のお供がエメラルド・シティーに向か う途中に、一面にポピーの咲いている場面がでてくる。このエメラルド・シティ ーというのは、ロサンゼルスであると個人的には信じているが、そこから車で一 時間ほどのところにあるランカスターという町の周辺には、このポピーが咲き誇 る場所がたくさん残っている。

いつまで遡ればいいのか、その点、アメリカの場合はわかりやすいのかもしれ ない。白人が来る前か、定住しはじめたころの風景、古くからこの土地に住んで いた人々がみていた風景が、それにあたるのだろう。 生活の便利さからいえば、今とは比較にもならないくらい不便なのかも知れな いが、そこには、自然と共存していた、自然によって生かされていた祖先の姿と 素朴さがある。その自然を「征服」・「開発」(破壊)せずに、共存しつつ、発 展してくる道もあったとも思うが、それを言っても始まらない。

ポピー保護区の他にも、鶴などの冬鳥が飛来する場所や、ちょうどいい季節に そこをドライブするだけでも気持ちのいい場所が、まだカリフォルニアには残っ ている。











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